Japanese Dictionary
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きょう‐そう〔キヤウ‐〕【競走】
読み方:きょうそう
[名](スル)一定の距離を走ってその速さをきそうこと。「オートバイ—」「障害物—」
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競走
★1.他者の力を利用して、先に目的地に着く。『十二支(えと)の起こり』(昔話)神様が、「指定日までに駆けつけて来た者を十二支の仲間に入れる」と動物たちに言う。牛は足が遅いので、他の動物よりも早く出かける。鼠が牛の背中に乗り、一番に到着した牛の前に飛び降りる。それで、十二支のはじめは鼠に決まった(滋賀県蒲生郡竜王町山面)。*鼠が猫を裏切る物語もある→〔猫と鼠〕1の『十二支の由来』(中国昔話)。『狸と田螺』(昔話)伊勢参りに行く狸と田螺が、大神宮の鳥居まで駆けっこをする。田螺は貝の蓋を開いて、走る狸の尾にくいつく。狸は鳥居に着くと喜んで尾を振り、それが石垣にぶつかって、田螺の貝が半分割れる。転がり落ちた田螺は、痛さを我慢して「狸君、遅いなあ。僕は先に着いて、肩を脱いで休んでいるところだ」と言う。『平家物語』巻9「宇治川先陣」源氏の武者たちが宇治川の先陣を争う。畠山重忠が川を渡って対岸に上がろうとする時、彼の烏帽子子(えぼしご)大串次郎が馬を流されて、重忠の背後に取りつく。重忠が大串を岸に投げてやると、大串は岸に立って「大串次郎、宇治川の先陣ぞや」と名乗りをあげ、敵も味方もどっと笑う。★2.計略を使って、競走相手を遅れさせる。『平家物語』巻9「宇治川先陣」梶原源太景季と佐々木四郎高綱が宇治川の先陣を争って馬を走らせる。遅れた佐々木が、「馬の腹帯がゆるんでいる」と梶原に声をかけ、梶原は手綱を放して腹帯をしめる。その間に佐々木は追い抜いて川へ駆け入り、宇治川を一文字に渡って対岸へ上がる。『変身物語』(オヴィディウス)巻10 俊足の娘アタランタは、求婚する男たちに競走を挑み、負ければ花嫁となり、勝てば求婚者を殺す取り決めをする。多くの若者が死んだ後、ヒッポメネスがアタランタと競走し、3つの黄金のりんごを投げる。アタランタがそれを拾っている間に、ヒッポメネスはゴールに入る〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第9章では、メラニオンが黄金のりんごを投げ、アタランテを妻とする〕。★3.仲間たちの力を借りて、競走に勝つ。『鯨となまこ』(昔話)鯨となまこが、走りくらべをする。なまこは仲間たちに、「1人ずつ浦々に待機していてくれ」と頼んでおく。油良の浦から競走を開始し、鯨はえらい勢いで小浜の浦まで泳いで来て、「なまこ殿」と声をかけてみる。すると、なまこ(の仲間)が「鯨どの、今来たのか」と答えたので、鯨は驚く。下田の浦まで泳いで「なまこ殿」と呼ぶと、また「鯨どの、今来たのか」と答える。どこまで行っても、なまこに先を越され、とうとう鯨は負けてしまった(山口県大島郡)。*類話である→〔兎〕1aの『亀とウサギ』(アフリカの昔話)では、多くの亀が方々に隠れて兎をだます。★4a.古代の戦車競走。『ベン・ハー』(ワイラー)ユダヤの名家の青年ベン・ハーは、ローマ軍の将校メッサラによって無実の罪におとされ、ベン・ハーの母と妹は地下牢に入れられた。ベン・ハーは母と妹が獄死したと聞き、メッサラへの復讐の念に燃えて、ローマ・カルタゴ・アテネなど諸国の代表が争う大戦車競技会に臨む。メッサラの戦車は車軸に鋭い刃物が取りつけてあり、併走する競走相手の戦車を破壊した。メッサラはベンハーの戦車をも破壊しようとするが、逆にメッサラの戦車の車輪がはずれてしまう。戦車は横転してメッサラは死ぬ〔*死ぬ間際にメッサラは、ベン・ハーの母と妹が生きていることを告げる〕→〔ハンセン病〕1。★4b.二十世紀の自動車競走。『理由なき反抗』(レイ)17歳のジムは、転校して来た高校で不良グループにからまれ、リーダーのバズと、チキン・ランをすることになる。2人がそれぞれ自動車を崖に向けて疾走させ、崖の直前で飛び降りる。先に飛び降りた方が負けになるのだ。ジムは車が崖から転落する直前に、うまく飛び降りた。しかしバズは服の袖がひっかかって車から出ることができず、車もろとも崖下へ落ちて死んでしまった。★5a.速く走る者が、ゆっくり歩く者に追いつけない。『三国志演義』第68回 神通力を持つ左慈を捕らえて殺そうと、曹操の家来3百人が騎馬で追いかける。前方を左慈がゆっくりと歩いて行く。家来たちは馬を走らせるが、どうしても追いつくことができなかった。『捜神記』巻1-18 薊子訓(けいしくん)は神仙の人である。彼が1人の老人と語り合っているのを見た男が、「薊先生、お待ち下さい」と呼びかけた。薊子訓と老人は歩きながら返事をした。ゆっくり歩いているように見えたが、男が馬を走らせても追いつけなかった。★5b.言葉のトリックによって、速く走る者がゆっくり歩く者に追いつけない。アキレスと亀の故事ゼノンのパラドックス。俊足のアキレスがいくら速く走っても、前方をゆっくり歩く亀に追いつけない。アキレスが亀のいたA地点まで来た時には、すでに亀はA地点より少し前方のB地点へ進んでいる。アキレスがB地点まで来ると、亀はごくわずか前方のC地点へ進んでいる。アキレスと亀の距離は無限に縮まるが、どこまでいってもゼロにはならない。*→〔尾〕5の『無門関』(慧開)38「牛過窓櫺」の、「牛の尾を無限に分割してもゼロにはならない」という考え方と同様である。*夏目漱石は『思い出す事など』15で、アキレスと亀の故事に言及し、これと同様の論理として、柿の無限分割、意識の無限分割のたとえ話をする→〔分割〕11。★5c.追いつくだけで良いのに、追い越してしまう。『坐笑産(ざしょうみやげ)』「かける名人」追いかけっこの名人が、泥棒を追いかけて走る。向こうから友達が来て「何だ何だ」。名人「泥棒を追っかけている」。「その泥棒はどこだ?」「後から来る」。*与太郎は太陽を追い越した→〔太陽〕5の『太陽』(落語)。★6.わざと競走に負ける。『長距離走者の孤独』(シリトー)感化院に収容中の17歳の「おれ(スミス)」は、クロスカントリーの選手に抜擢される。院長は「おれ」が全英長距離競走で優勝し、ブルーリボン賞を獲得することを期待する。「誠実を旨とせよ」と説教する院長とその同類たちを、「おれ」は軽蔑しつつも、うわべは院長に従う。競技当日、「おれ」は計画どおりわざと負けて、院長を落胆させる。★7.好きな時に、好きな所から、好きなだけ走る競走。『不思議の国のアリス』(キャロル)アリスは自分が流した涙の海に溺れそうになるが(*→〔涙〕4)、他にも鼠や小鳥などいろいろな動物が海に落ち、皆はアリスを先頭に岸まで泳ぐ。ドードー鳥が、皆の濡れた体を乾かすための「コーカス・レース」を提案する。レースのコース線をまるく描き、一同はコースのあちこちに位置を定める。「スタート」の合図はなく、各自が好きな時に走り出し、好きな時にやめるのだ。そうやって30分もたつと、皆の体はすっかり乾いたので、ドードー鳥は「競走終わり!」と叫んだ。*兎と亀・はりねずみの競走→〔兎〕1a・1b。
Similar words:
駆けっこ 駈けっくら 徒競走 ランニング
Japanese-English Dictionary
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きょうそう【競走】
a (foot) race
・100メートル競走
the 100-meter dash
・自動車[オートバイ]競走
「an automobile [a motorcycle] race
・障害物競走
a hurdle race/the hurdles(▼単数扱い)
・長[中]距離競走
a long-[middle-]distance race
・競走に勝つ[負ける]
win [lose] a race
・友達と学校まで競走した
I raced to school with a friend.
競走者 a runner, a racer;〔短距離の〕a sprinter
競走車 a racer; a race [racing] car
競走馬 a racehorse
競走場 a racetrack
競走路 a course; a (race)track
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競走
読み方:きょうそう
(名詞、サ変名詞、自動詞)
[対訳] race; run; dash; sprint
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*Looking up names of animals, plants, people and places. =動物名・植物名・人名・地名を引く=