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げんそう‐きょく〔ゲンサウ‐〕【幻想曲】
読み方:げんそうきょく
形式にとらわれず、作者が自由に楽想を展開させて作る曲。ファンタジー。
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シューマン:幻想曲
英語表記/番号出版情報シューマン:幻想曲PhantasieC-Dur Op.17作曲年: 1836-1838年 出版年: 1839年 初版出版地/出版社: Breitkopf&Härtel 作品概要
楽章・曲名演奏時間譜例1第1楽章 ハ長調 Durchausphantastischundleidenschaftlichvorzutragen10分00秒NoImage2第2楽章 変ホ長調 Massig.Durchausenergisch7分00秒NoImage3第3楽章 ハ長調 Langsamgetragen.Durchwegleisezuhalten9分00秒NoImage作品解説執筆者: PTNA編集部
シューマンのピアノ曲の中でも屈指の傑作で、1836年に着手されている。この曲は、リストが提唱した「ベートーヴェン記念碑建立募金」に寄付するために、「ベートーヴェン記念碑のためのオボルス(ギリシャ貨幣、寄付金の意):フロレスタンとオイゼビウスによる大ソナタ 作品12」と題して書き始められた。そして、1838年に曲は完成し、「幻想曲」という題名に変更され、作品番号17として1839年に出版された。
第1楽章「どこまでも幻想的かつ熱情的に演奏する」ハ長調
ベートーヴェンらしいソナタ形式で書かれているが、シューマン的な手法で展開される。
楽章の終わりの方では、ベートーヴェンの歌曲「遙かなる恋人に」の一部が現れる。
第2楽章「中庸の速さで、どこまでも精力的に」変ホ長調
当初この楽章には「凱旋門」という標題が付けられて、輝かしく壮大な行進曲となっている。
第3楽章「ゆるやかに演奏する。どこまでも穏やかに保つ」ハ長調
夢のように静かで、おだやかで、瞑想的な楽章。ベートーヴェンのピアノソナタ作品111の終楽章を想起させるような曲だが、シューマン風のロマンティシズムに満ち溢れた曲である。
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グラズノフ:幻想曲
英語表記/番号出版情報グラズノフ:幻想曲Fantasie Op.104作曲年: 1919-20年 作品概要
楽章・曲名演奏時間譜例1 Moderatotranquillo-Allegro11分30秒NoImage2 Scherzo:Allegro5分30秒NoImage3 Moderato-Allegro11分00秒NoImage
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幻想曲
英語表記/番号出版情報ルビンシテイン,アントン:幻想曲ホ短調Fantaisie,e-moll Op.77作曲年: 1866年 初版出版地/出版社: Senff,Heugel IMSLPを参照: http://imslp.org/wiki/Fantaisie_op.77_(Rubinstein,_Anton)ルードルフ:幻想曲Fantasie Op.14シマノフスカ,マリア・アガタ:幻想曲ヘ長調Fantaisie出版年: 1820年 初版出版地/出版社: Leipzig リスト:幻想曲(ワーグナーの「リエンツィ、最後の護民官」からの主題による)Phantasiestück(Rienzi,derLetztederTribunen) S.439 R.272作曲年: 1859年 バックス:幻想曲イ短調FantasiainAminor作曲年: 1900年 マルトゥッチ:幻想曲Fantaisie Op.51作曲年: 1880年 ベネット:幻想曲イ長調FantaisieinAmajor Op.16作曲年: 1837年 出版年: 1837年 初版出版地/出版社: Breitkopf&Härtel モーツァルト:幻想曲ハ短調(未完)Fantasiec-Moll(unvollendet) K.396 K6.385f作曲年: 1782年 ラフ:幻想曲Fantasie Op.119作曲年: 1864年 出版年: 1865年 ラフ:幻想曲Fantaisie Op.142作曲年: 1867年 出版年: 1869年 ラフ:幻想曲ト短調Fantasie Op.207作曲年: 1877年 出版年: 1878年 フルトヴェングラー:幻想曲Fantasia作曲年: 1898?年 フルトヴェングラー:幻想曲Phantasie作曲年: 1900年 リース:幻想曲Fantasia Op.85-1リース:幻想曲Fantasia WoO.87トマーシェク(トマシェク):幻想曲Fantasia Op.32ブッティング:幻想曲Fantasie Op.28作曲年: 1924年 ステンハンマル:幻想曲イ短調Fantasieモッテンセン:幻想曲Phantasy Op.27作曲年: 1965-66年 トーニ:幻想曲Fantasia Op.25作曲年: 1944年 チェルニー(ツェルニー):幻想曲Fantasie Op.27チェルニー(ツェルニー):幻想曲Fantasie Op.226ルビンシテイン,アントン:幻想曲ヘ短調Fantaisie,f-moll Op.73作曲年: 1864年 初版出版地/出版社: Senff,Hamelle IMSLPを参照: http://imslp.org/wiki/Fantasie,_Op.73_(Rubinstein,_Anton)ヒラー:幻想曲Fantasie Op.110ドライショック(ドライショク):幻想曲Fantaisie Op.12ドライショック(ドライショク):幻想曲Fantaisie Op.55ヴォルフ,エドゥアール:幻想曲(ドニゼッティのドン・セバスティアン)Phantasie(DonSebastianvonDonizetti) Op.98木下牧子:幻想曲作曲年: 1979年 ギロー:幻想曲Fantaisieゲッツ:幻想曲ニ短調Fantasie,d-moll作曲年: 1860年 平井京子:幻想曲Fantasyforviolinandpiano作曲年: 1999年 フリードマン:幻想曲Fantasiestücke Op.45ヴェルフル:幻想曲FantasieetFugueOp.9 Op.9ベートーヴェン:幻想曲Fantaisie Op.77作曲年: 1809年 出版年: 1810年 初版出版地/出版社: Clementi メンデルスゾーン:幻想曲ニ短調Fantasiad-Moll T1作曲年: 1824年 出版年: 2009年 初版出版地/出版社: Rom シューベルト:幻想曲ト長調Fantasie D1作曲年: 1810年 出版年: 1888年 シューベルト:幻想曲ト短調Fantasie D9作曲年: 1810年 出版年: 1888年 シューベルト:幻想曲ハ短調Fantasie D48作曲年: 1813年 出版年: 1871年 ブルックナー:幻想曲Fantasie WAB.118作曲年: 1868年 ブルッフ:幻想曲Fantasie Op.11作曲年: 1861刊年 ヴォルジーシェク:幻想曲ハ長調Fantasie Op.12出版年: 1822年 初版出版地/出版社: Artaria,Vienne シマノフスキ:幻想曲ヘ短調Fantazja Op.14作曲年: 1905年 出版年: 1911年 初版出版地/出版社: Piwarski ハリス:幻想曲Fantasy作曲年: 1954年 ヘンデル:幻想曲ハ長調FantasieC-Dur HWV490作曲年: before1706?年 マルティヌー:幻想曲Fantaisie作曲年: 1929年 ライヒャ:幻想曲ホ短調FantasiainEminor Op.61作曲年: 1807年 出版年: 1807年 初版出版地/出版社: Kühnel,Leipzig 外山雄三:幻想曲作曲年: 1981年 シューベルト:幻想曲ト長調Fantasie D1B作曲年: 1810/11?年 シューベルト:幻想曲ハ短調Fantasie D2E(993)作曲年: 1811年 グラズノフ:幻想曲Fantasy作曲年: 1929-30年 カプースチン:幻想曲Fantasia Op.115作曲年: 2003年
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バッハ:幻想曲ト短調
英語表記/番号出版情報バッハ:幻想曲ト短調Fantasieg-Moll BWV920作品解説2008年5月 執筆者: 朝山 奈津子
6部分から成る長大な作品。長いということそれ自体がこの曲の特徴であり、また欠陥でもあろう。ドイツの伝統的なトッカータやファンタジーに明確なT-F-T-F-Tの構造をとらないが、第2・4・5セクションは両手の模倣で始まる。いっぽう、セクションの切れ目など随所で分散和音が2分音符で示され、即興風の処理が求められている。鍵盤の幅をいっぱいに使う両手の分散和音や摸続進行による無窮動のパッセージなど、常套句が多用され、並列されている。いささか冗長の感も否めない。
しかし、用いられる和音や和声の進行には――バッハの典型と呼びがたいものが多いにせよ――色彩感ある大胆な響きがときおり光射すように顕れる。真作であるかどうかはともかく、演奏効果は充分に期待できる作品である。
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モーツァルト:幻想曲ニ短調(未完)
英語表記/番号出版情報モーツァルト:幻想曲ニ短調(未完)Fantasied-Moll K.397 K6.385g作曲年: 1782年 作品解説執筆者: PTNA編集部
「幻想曲 ニ短調」は、ウィーン滞在中の1781年に作曲された。曲は「幻想曲」というタイトル通り自由な形式で書かれ、冒頭の序奏のような役割を果たす分散和音の部分や、哀感に満ちた美しい主題など、まさに天才的な霊感が遺憾なく発揮された名曲である。しかしこの曲は未完で、現在演奏される形の最後10小節は、モーツァルトの死後、他人の手によって補筆されたものである。その補筆は当時の指揮者アウグスト・ミュラーによると言われているが、正確には判っていない。
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モーツァルト:幻想曲ハ短調
英語表記/番号出版情報モーツァルト:幻想曲ハ短調Fantasiec-Moll K.475作曲年: 1785年 出版年: 1785年 初版出版地/出版社: Artaria 作品解説2008年10月 執筆者: 稲田 小絵子
ピアノ・ソナタ第14番ハ短調と共に1785年に出版された。モーツァルトの自作品目録によれば、ソナタの作曲は84年10月14日、幻想曲は翌85年5月20日である。幻想曲は本来、導入曲としての用途があったため、この作品は、ソナタの出版に際して、その前奏のために作曲されたものと考えられる。これら2曲は現在でも1セットとして扱われることが多いが、モーツァルト自身が幻想曲のみを演奏することもあったことから、独立した2つの作品と考えて問題ないだろう。
献呈はテレージア・フォン・トラットナー。当時モーツァルトが借りていた家(いわゆる「フィガロ・ハウス」)の家主夫人である。彼女はまた、モーツァルトのピアノの生徒でもあった。
作品は転調を頻繁に繰り返し、幻想曲の名にふさわしく自由に展開してゆくが、テンポの変化によって5つの部分に分けられる。すなわちアダージョ、アレグロ、アンダンティーノ、ピウ・アレグロ、アダージョである。最初のアダージョはさらに、重苦しいハ短調と明るい響きのニ長調の2つに分割できる。地から這い上がるようなこの冒頭主題が最後に回帰し、ハ短調ソナタへの橋渡しとなって作品を閉じる。
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バッハ:幻想曲ハ短調(ロンドによる)
英語表記/番号出版情報バッハ:幻想曲ハ短調(ロンドによる)FantasieübereinRondoc-Moll BWV918作品解説2007年10月 執筆者: 朝山 奈津子
4小節あまりの短いロンド主題と簡明な2声のテクスチュアながら、130小節を超える比較的長い作品である。「幻想曲」というタイトルは、当時の慣例では対位法的内容を指すが、ここではさらに、意表をつく組合せを生んだ想像の力をも意味するようにみえる。この中でバッハが試みたのは、ロンドの形式と対位法書法の結合だった。この組合せに生じる原理的な困難とは、対等な力関係で水平方向に続いていくはずの諸声部が、回帰する主題によっていわば寸断されること、また、ロンド主題とエピソード部分の対位法の主題が競合し、互いの力を殺いでしまうことにある。
率直に言って、これらの課題が作品の中で完全に解決されているとは言いがたい。各セクションは確かにこの上もなく滑らかに連続しているが、それは主題の回帰に緊張感を持った準備がなされないということである。エピソード部は模倣で始まるが、やがてロンド主題の素材を用いて展開するため、クプレ(回帰部分)とエピソードの対比が曖昧になる。音域やテンポ感の変化にも乏しく、楽曲全体の山場をとっさにはみいだせない。弾き手も聴き手も愉しむためには、細かい分析が必要だろう。
ロンド主題は曲頭のほか、第29小節、第80小節、第120小節に3回ほど登場する。このロンド主題には、更に8小節の続きがある。最初のエピソード(第13-27小節)ではロンド主題後半はほとんどまったく現れない。また、2回目のエピソード(第33小節以降)もいっけん関係のなさそうな動機の転回対位法で開始する。が、この部分の大半を支配する四分音符のシンコペーション動機は、ロンド主題後半から得られたものである。第80小節の3回目のクプレは、ロンド主題の最初の2小節の転回(声部の上下を入れ替える対位法技法)によって拡大されている。これに続くエピソードも、クプレで用いた2小節単位の転回を繰り返すが、その内容はロンド主題後半および2回目のエピソードから導き出された動機である。厳格な転回は第99小節でいったん収束するが、これ以降も1小節ごとの短い転回やそれに類するパラフレーズが散りばめられている。そして、第116小節からはロンド主題前半の結びにのみわずかに聴かれた付点リズムが2小節に渡って左手に登場し、楽曲が終わりに近いことを暗示する。左右の手の音域が広がり、左手に長いトリルが置かれ、ロンド主題の最後の提示が準備される。これはロンド主題後半を完備し、冒頭の提示と完全に一致している。
このようにみると、バッハはクプレとエピソードが交代するロンドの形式の陰で、主題の提示と展開を緻密に進めているのがわかる。
また、よどみなく流れる2つのパートは、当時の最新のスタイルであるギャラント様式を意識したものである。この作品は、バッハが自らの得意とする分野に新しい形式や様式を意欲的に取り込んで生まれたということができる。
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バッハ:幻想曲ハ短調
英語表記/番号出版情報バッハ:幻想曲ハ短調Fantasiec-Moll BWV919出版年: 1843年 初版出版地/出版社: Peters 作品解説2007年9月 執筆者: 朝山 奈津子
プレラーの手稿譜に伝えられる。(ヨハン・ゴットリープ・プレラー(1727-1786)はバッハの弟子の世代に当たる音楽家で、彼と兄弟弟子ヨハン・ニコラウス・メンペルが作成したオルガンとクラヴィーアのための楽譜帖は、バッハの創作を再構築する上で重要な資料となっている。)プレラーは作曲者を「ベルンハルト・バッハ」としており、この名に当てはまる作曲家としてはJ.S.バッハの再従兄弟でアイゼナハで活動したヨハン・ベルンハルト(1676-1749)か、あるいはJ.S.バッハの夭逝した息子ヨハン・ゴットフリート・ベルンハルト(1715-1739)が考えられる。アイゼナハのヨハン・ベルンハルトとする説が一般的だが、音楽内容がJ.S.バッハにきわめて近いことから、バッハの息子の作、あるいは誤って伝えられているだけでバッハ自身の作品である可能性は棄てきれない。
全体は2声、わずか25小節の簡潔な作品だが、順次進行と跳躍、上行下行と同音反復を適度に含むバランスの取れた主題を持つ。J.S.バッハはこうした可能性の豊かな主題をひらめく天才だった。また、主題の前半と後半を対位法的に組合せるやりかたは、まさに「インヴェンション」と呼ぶにふさわしい。作曲者をあれこれと詮議するまでもなく、短く引き締まった理知的な作品である。
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シューベルト:幻想曲ハ長調(グラーツの幻想曲)
英語表記/番号出版情報シューベルト:幻想曲ハ長調(グラーツの幻想曲)Fantasie(GrazerFantasie) D605A作曲年: 1818?年 出版年: 1969年 初版出版地/出版社: Bärenreiter 作品解説2008年6月 執筆者: 稲田 小絵子
1969年、グラーツの音楽家であったルドルフ・フォン・ヴァイス=オストボルンの遺品の中から発見され、その年のうちに出版された作品(その地名に因んで《グラーツ》幻想曲と呼ばれる)。発見された譜はシューベルトの自筆譜ではなかったが、彼の作品を管理していたヨーゼフ・ヒュッテンブレンナーの筆跡で「フランツ・シューベルト作曲 ピアノフォルテのための幻想曲」と記されていた。作曲はシューベルト21歳の1818年と推定されている。
主題はシューベルトらしい牧歌的な旋律がオクターヴで歌われる。その後は「ポロネーズ風に」という指示による舞曲リズムをはじめ、さまざまな調と動きを幻想的に展開させるが、最終的には冒頭主題が回帰し、穏やかに作品を閉じる。
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ハイドン:幻想曲(カプリッチョ)ハ長調
英語表記/番号出版情報ハイドン:幻想曲(カプリッチョ)ハ長調Fantasia(Capriccio)C-Dur Hob.XVII:4 op.58作曲年: 1789年 出版年: 1789年 初版出版地/出版社: Artaria 作品解説2007年12月 執筆者: 齊藤 紀子
1789年に作曲された。冒頭のモティーフを十分に用いて音楽が展開される。左右の手のユニゾンや重音、分散和音、オクターヴの連続使用、左右の手の間の模倣等、鍵盤楽器で奏することのできる多様な音形や演奏方法が散りばめられている。また、曲の全体を見てみると、効果的な転調が、この作品の推進力の推移に寄与していることがわかる。
■参考文献
JosephHaydn“Klavierstucke/Klaviervariationen”ed.SonjaGerlach,G.Henle1997
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ドライショック(ドライショク):幻想曲ヘ短調
英語表記/番号出版情報ドライショック(ドライショク):幻想曲ヘ短調Fantaisie,F-dur Op.31初版出版地/出版社: Schott IMSLPを参照: http://imslp.org/wiki/Fantaisie,_Op.31_(Dreyschock,_Alexander)作品解説執筆者: PTNA編集部
第1楽章:Andante 2/4拍子
展開部のないソナタ形式(それぞれの部分が展開部を必要としないぐらいドラマティック)
■序奏(ヘ短調):悲愴だが劇的な開始を告げる。
■第1主題(ヘ短調):行進曲風の荘重なメロディーが印象的
■第2主題(ハ短調):ショパンの『革命』の左手のパッセージが何と右手に登場し、圧倒されるテクニカルワークを展開する。
■第1主題の再現(へ短調):行進曲風のメロディが、三連符の伴奏に支えられながら歌われる。
■第2主題の再現(ヘ短調):さらにヒートアップした『革命』のパッセージが縦横無尽に活躍する。
■コーダ(ヘ短調):第2主題がトリルとともに頂点に上り詰める。最後は二重オクターブの嵐と『革命』が打ち鳴らされて締めくくる。
第2楽章:Veloce 6/8拍子
■主部(変二長調):第1楽章とは打って変わって平和で穏やかな楽章。 さわやかなそよ風のようなテーマが軽やかに登場。
■中間部(変ホ短調):哀愁を帯びたメロディーが印象的。
■主部の再現(変二長調):主部同様のメロディーが再び歌われる。
■トリオ(変ロ短調):優雅なオクターブが戯れる。
■主部の再現(変二長調)
■第2トリオ(変ロ短調):トリオ同様オクターブ中心で踊られる。
■主部・中間部・主部が繰り返され終わる。
第3楽章:Allegrospiritoso
展開部のないソナタ形式(それぞれの部分が展開部を必要としないぐらいドラマティック)
悲しみと激情の疾走。
第1主題(ヘ短調):疾走する左手の上に、悲しみが歌われる。しかし感傷に浸るまもなく、次々と襲い掛かる心の葛藤。オクターブの七変化ともいうべき、さまざまな展開が施される。
第2主題(変イ長調):唯一希望の光が差し込んでくる。主題の確保は、オクターブで朗々と奏でられる。 後半では新しい精神に溢れた第3主題が華やかに打ち上げられる。
第1主題の再現(変ロ短調):再び疾走する悲しみと激情。さらにオクターブやテクニカルな展開になっている。
第2主題の再現(変イ長調):雪崩れ込んできた第1主題に牽引された第2主題は、さきほどとは打って変わって、パワーアップを図る。そこでは希望の光は勝者のファンファーレに昇格し、高らかに歌い上げられる。
コーダ(ヘ短調):すべてオクターブで彩られる。二重オクターブ、分散オクターブ、リスト・オクターブ。最後は激情の嵐と大伽藍の鐘が打ち鳴らされ見事に終結する。
リストのライヴァル、ドライショックにふさわしい技巧的であるが精神的に極めて高い内容を持った曲。ロマン派の大ピアニスト、ヴォルフ、ヘンゼルト、リスト、ローゼンハイム、デーラー、ショパン、タールベルクらと戦うための武器倉庫となった曲でもある。
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シューベルト:幻想曲ヘ短調
英語表記/番号出版情報シューベルト:幻想曲ヘ短調Fantasie D940 Op.103作曲年: 1828年 出版年: 1829年 作品解説2008年6月 執筆者: 稲田 小絵子
シューベルト最期の年、1828年のピアノ連弾作品。彼の数多い連弾曲の中でも、高い音楽的内容をもつ傑作と称される。献呈は、出版社によって、シューベルトが2度のジェリズ赴任でピアノを教えたエステルハージ伯爵家の下の娘カロリーネになされた。
作品は、切れ目なく続く3つの楽章から成るが、実質的には4部分構成といえよう。暗く陰鬱であるが魅力的な第1楽章冒頭の主題が、第3楽章の後半に回帰し、やがてフーガを展開して作品を閉じるといった、構成的にも整った作品である。
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ショパン:幻想曲ヘ短調
英語表記/番号出版情報ショパン:幻想曲ヘ短調Fantasief-Moll Op.49 CT42作曲年: 1841年 出版年: 1841年 初版出版地/出版社: Schlesinger 献呈先: PrinceseCatherinedeSouzzo作品解説2009年8月 執筆者: 安川 智子
1839年よりジョルジュ・サンドと過ごしたノアンの地で、ショパンは数多くの傑作を生み出した。1841年10月20日、ショパンはノアンからパリにいる友人フォンターナに宛てて、「今日《ファンタジア》が終わった」と記している。41年前後のショパンは、健康的にも、またサンドとの関係においても非常に充実した時期にあり、この《幻想曲》作品49のほか、《タランテラ》作品43、《ポロネーズ 嬰ヘ短調》作品44、《プレリュード》作品45、《演奏会用アレグロ》作品46、《バラード第3番》作品47、ふたつの《ノクターン》作品48といった作品を生み出している。そのため各曲は互いに影響しあい、性格的小品に分類される器楽ジャンルの枠を薄めるとともに、それぞれが深みと自由度を増している。
器楽作品に用いられるファンタジー(ファンタジア)という名称は古くからの歴史をもつ。19世紀においてピアノ独奏曲としての「ファンタジア」は珍しくないが、ショパンがこの言葉に明確なジャンルとしての意識を抱いていたかは疑問である。直前に作曲された《ポロネーズ》作品44について、ショパンは当初「ポロネーズの形式の《幻想曲》」あるいは「ポロネーズの一種というより、幻想曲です」ということを書いている。また晩年の傑作《幻想ポロネーズ(ポロネーズ=幻想曲)》の存在からも、ショパンはポロネーズと幻想曲を非常に近い存在ととらえ、「幻想曲」という形態に、即興的色彩はもちろんのこと、祖国ポーランドへの想いと幻想を自由に表現するという役割を付していたようである。
結局ショパン唯一の《幻想曲》となった作品49は、へ短調に始まり変イ長調で終わる。全体をソナタ形式風にとらえれば、序奏(Tempodimarcia)、提示部(agitato;68小節~)、展開部(143小節~、途中Lentosostenutoのエピソードを挟む)、再現部(236小節~)、コーダ(309小節~)となろう。しかし幻想曲のタイトルにふさわしく、調と楽想の自由な交錯として解釈した方が自然である。「行進曲のテンポでTempodimarcia」と指示されたへ短調の導入部は、葬送行進曲のような暗い影に覆われ、一拍ごとに和音が付けられて重々しく進む。一方Assaiallegroと指示された変イ長調のコーダ部(322小節~)は三連符のアルペジオで華々しく上り詰め、勝利の宣言であるかのように終わる。このふたつの調、ふたつの楽想がショパンのポーランドに対するふたつの幻想的心情としてこの作品を支配しているように思える。三連符の走句は即興的変化を伴って、楽曲を構成する核となる主題を支え(68小節~、155小節、235小節)、あるいは移行部として機能する(43小節~、143小節~、223小節~)。また和音による楽想は、行進曲風の移行部を形成するかと思えば(127小節~)、「Lentosostenuto」のテンポ表示とともに、抒情的な旋律を切々と歌い上げる(199小節~)。形式性と即興性を兼ね備え、不均等な対称性を保ちながらポーランドへの思いを自由に謳いあげた《幻想曲》は、ショパン独特の世界を作り上げるとともに、《幻想ポロネーズ》へと連なる傑作群の中心的存在に位置づけられよう。
■参考文献
アーサー・ヘドレイ編『ショパンの手紙』小松雄一郎訳、白水社、2003年。
JimSamsoned.ChopinStudies.CambridgeUniversityPress,1988.
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スクリャービン(スクリアビン):幻想曲ロ短調
英語表記/番号出版情報スクリャービン(スクリアビン):幻想曲ロ短調Fantaisie Op.28作曲年: 1900年 出版年: 1901年 初版出版地/出版社: Belaïev 作品解説2007年5月 執筆者: PTNA編集部
スクリャービンの作品群は一般的に、主にショパン風のピアノ小品を数多く作った初期(~1989)、リスト・ワーグナーの影響を受け調性にとどまりながらも神秘和音を使い始め独自の作風を試みた中期(~1908)、そして自分の芸術と神秘主義的思想を結びつけ、さらに音と色彩の合一をめざした後期(~1915)の三つに分類されるが、1900~01にかけて作られたこの作品は初期の集大成ともいえる壮大な曲想を持っている。まだショパンや後期ロマン派的な濃厚な感情表現が随所に見られるが、冒頭で提示させた短二度のモチーフをたった数小節の間に異常な緊張感をともなった長七度にまで発展させるところには中期・後期作品でみられる深い神秘性を垣間見ることができるだろう。彼自身が20代前半で右手をこわしたせいか、特に左手に連続するオクターヴの跳躍や広いアルペジオのパッセージが現れ技術的に非常に困難な曲だが、それ以上に美しく流れる官能的なメロディーやスクリャービン独特の躍動感あふれる付点を含む三連符のリズムなど様々な魅力的な要素がちりばめられ、さらにリストやワーグナーの交響楽的な重厚さ、自在に動くいくつもの入り組んだ旋律線なども合わせ持った、非常に聴き応えのある作品である。
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メンデルスゾーン:幻想曲嬰ヘ短調(スコットランド・ソナタ)
英語表記/番号出版情報メンデルスゾーン:幻想曲嬰ヘ短調(スコットランド・ソナタ)Fantasie(Sonateécossaise)fis-Moll Op.28 U92作曲年: 1833年 出版年: 1834年 初版出版地/出版社: Simrock 献呈先: IgnazMosheless作品概要
楽章・曲名演奏時間譜例1第1楽章 Mov.1Conmotoagitato:Andante5分30秒NoImage2第2楽章 Mov.2Allegroconmoto2分30秒NoImage3第3楽章 Mov.3Presto6分30秒NoImage作品解説2007年9月 執筆者: 和田 真由子
1830年、ワイマールに滞在中、メンデルスゾーンはゲーテのもとを訪れ、そこで演奏したうちの一曲が、この《幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」》であったとされている。メンデルスゾーンは1828年に《スコットランド・ソナタ》という曲の作曲をはじめ、その後、5年間、これを書きなおし続けた。そして、1834年に出版したものが、この《幻想曲 嬰ヘ短調「スコットランド・ソナタ」》である。
全3楽章からなり、全曲通して演奏される。
第1楽章:嬰へ短調 4分の2拍子 コン・モート・アジタート―アンダンテ
冒頭8小節にわたるアルぺッジョの序奏(コン・モート・アジタート)からはじまる。アンダンテの主部につづき、登場するアルぺッジョの挿句は、徐々に勢いと音量を増し、クライマックスを形成する。大きな変化が加えられた再現部が奏されたのち、序奏のアルペジオが再び現れ、幻想的に曲をとじる。
第2楽章:イ長調 2分の2拍子 アレグロ・コン・モート
およそA-B-Aの形によっており、スケルツォ的な性格をもつ。対位法的な技法が用いられた短い楽章。
第3楽章:嬰へ短調 8分の6拍子 プレスト
即興的な性格が強いが、およそソナタ形式によっている。第一主題は、6連音符の下降音形からなり、めまぐるしく動く。第2主題は、オクターブでゆったりとうたわれる。6連音符は、一曲全体を貫いており、その音形の変化によってさまざまな表情がうみだされている。情熱的な終曲。
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ウィキペディア(Wikipedia)
幻想曲
幻想曲(げんそうきょく)は、ファンタジア(伊:fantasia,独:Fantasie,Phantasie,仏:fantaisie,fantasye,phantaisie,英:fancie,fancy,fansye,fantasy,fantazia,fantazie,fantazy,phansie,phantasy,phantazia)の訳語。一般に作曲者の自由な想像力に基づいて創作される器楽作品の名称として用いられる。しかしその実例は、即興的なものから厳格な対位法によるもの、小品から多楽章形式の大規模な作品まで、多岐にわたっている。
Similar words:
ファンタジヤ ファンタジー ファンタジア
Japanese-English Dictionary
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げんそうきょく【幻想曲】
a fantasy; a fantasia
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げんそうきょく【幻想曲】
a fantasia
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幻想曲
読み方:げんそうきょく
(名詞)
[対訳] fantasy; fantasia
Hán Tôm Mark Dictionary
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